コラム
エンディングノートで整える、私の旅支度
家族のために今できる準備を始めようコラム
人生の終わりを“旅のはじまり”と捉えたとき、その支度は静かで、やさしいものかもしれません。エンディングノートは、家族に伝えたい思いを書き残しておく、心の整理の一冊です。財産のことや葬儀への意向をまとめておくことで家族の負担を減らせるほか、普段は言えない感謝の気持ちをそっと伝えることもできます。今回は、「旅支度」としてのエンディングノートの役割と、無理なく始めるための考え方をご紹介します。

エンディングノートは自分の思いを伝えられる方法
「まだ元気だから」「考えるのはもう少し先でいい」。そう思うのは、ごく自然なことです。けれども、もしもに備えて少しずつ情報を整理しておくことは、遺された家族にとって大きな支えになります。
たとえば、預貯金や保険の契約内容、不動産の所在、クレジットカードの情報などは、本人しか把握していないことが多く、あとから確認するのはとても大変です。こうした情報をエンディングノートにまとめておけば、家族が手続きを進める際の負担を大きく減らすことができます。
また、相続に関する考えを記しておくことも、家族間のトラブルを防ぐ手だてになります。特に、財産を複数の人に分ける場合、「誰にどれだけ渡したいか」という希望がはっきりしていないと、兄弟姉妹の間で意見が分かれ、思わぬ争いに発展してしまうこともあります。
さらに、延命治療や介護についての意思も、あらかじめ記しておくことが大切です。本人が判断できない状態になったとき、家族は「どうすればよいのか」と迷ってしまいます。そんなとき、本人の意向がノートに明記されていれば、迷わず判断できます。 すべてを完璧に書こうとしなくても構いません。思いついたことから少しずつ書き留めていく。その積み重ねが、家族へのやさしい備えになります。
エンディングノートに書いておきたいこと
エンディングノートとは、人生の最期に向けて「自分の希望や想いを記録しておくノート」です。遺言書とは異なり法的効力はありませんが、自由な形式で記せるため、自分らしい言葉で、伝えたいことを残せます。書式や体裁に決まりはなく、市販のノートやルーズリーフでも構いません。大切なのは、「自分の意志を残す」ということです。
エンディングノートに書いておくとよい項目には、たとえば次のようなものがあります。
- 葬儀の希望(形式・規模・宗教・知らせたい人など)
- 親族や関係者の連絡先
- 遺影に使いたい写真について(愛昇殿のイベントで撮影も可能です)
- お墓や納骨についての希望
- 財産の概要(預貯金・不動産・保険・借入など)
- 相続の考え方や遺言書の有無
- 医療や介護に関する希望(延命治療・介護の場所・意思表示の有無など)
- ペットの世話や形見分けについて
- 大切な書類や印鑑の保管場所
- SNSやネットサービスのID・パスワード管理
愛昇殿では、見学会などのイベントにお越しいただいた方に「セルフポートフォリオ」というオリジナルのエンディングノートをお渡ししています。このノートには、書いておくといいことを整理しやすい体裁になっており、「何から書いていいかわからない」という方にも始めやすいでしょう。

葬儀の規模や通知範囲も事前に考えておこう
エンディングノートに記しておきたいことのひとつが、葬儀の規模や、誰に知らせるかといった具体的な希望です。葬儀は突然準備を進めなければならないことが多く、限られた時間のなかで多くの判断を迫られます。その負担を少しでも軽くするためには、生前のうちに意向を書き残しておくことが大切です。
葬儀の形式は大きく分けて「家族葬」と「一般葬」があります。家族葬は、親しい身内だけで行う小規模な葬儀で、静かに送り出したい方に向いています。一方、一般葬は、友人や会社関係など幅広い人を招く形式で、社会的なつながりを大切にしたい方に適しています。どちらを望むかによって、準備すべきことや費用の見通しも異なるため、事前に考えをまとめておくことが重要です。
あわせて、訃報を誰に伝えるかもノートに記しておくとよいでしょう。伝えなかったことで、後日になって弔問に訪れる人が現れ、対応に追われることもあります。知らせる範囲をあらかじめ決めておくことで、葬儀後の混乱を避ける助けになります。
さらに、費用に関する考えも記しておきましょう。愛昇殿では、万一に備えた互助会の積立制度や、葬儀費用専用の終身保険をご用意しています。あらかじめ加入しておけば、急な出費に備えられるだけでなく、家族の経済的負担を軽減する手段にもなります。 また、遺影に使う写真について希望がある場合は、エンディングノートに明記しておくと安心です。「この写真を使ってほしい」と書いておけば、遺族の迷いや不安を減らすことができます。愛昇殿では、年に一度のイベントで遺影写真の撮影サービスも行っており、自然な笑顔を今の姿で残すことができます。元気なうちに準備しておくことも、立派な備えのひとつです。
まとめるのは葬儀や手続きのことだけではない
エンディングノートは、「自分らしさ」や「人生の想い」を家族に伝える、大切な手段でもあります。
たとえば、これまでの人生で心に残っている出来事、大切にしてきた価値観、好きな食べ物や音楽、趣味などを書き残しておくことも大切です。家族がそれを読み返したとき、あらためて「あなたという人」を深く理解するきっかけになるでしょう。
また、これからやってみたいことや夢、挑戦してみたいことなど、「これからのこと」を書くのもおすすめです。エンディングノートは「人生の終わり」のためだけでなく、「これからの生き方」を見つめ直すためのノートでもあります。
さらに、非常に重要なのが「医療・介護」に関する希望です。万が一、意思表示ができなくなったときに、延命治療を希望するかどうか、どこで最期を迎えたいか、誰に介護をお願いしたいかといった意思を明確にしておくことで、家族の迷いを減らせます。 そして、「ありがとうを伝えたい人」へのメッセージを記すことも、とても大切です。普段はなかなか言葉にできない感謝の気持ちも、文字にすることでしっかりと伝えられます。家族、親族、友人、恩師など、名前とともに思いを綴ることで、その言葉が読む人の心に深く残るでしょう。

ノートは「更新しながら整える」のがコツ
エンディングノートは、一度書けば終わりというものではありません。むしろ、定期的に見直しながら内容を更新していくことで、より現実的で自分らしい備えになります。
人の気持ちや状況は、時間とともに少しずつ変化していくものです。考えが変わることもあれば、新たに気づくことが増えていくこともあるでしょう。だからこそ、「以前と違う内容になっても構わない」「迷ったら書き直せばいい」と、気負わず続けていくことが大切です。
たとえば、以前は「延命治療は希望しない」と思っていた人が、身近な人の介護を経験することで、「そのときにならないとわからない」と感じるようになることもあります。葬儀の形式や、使ってほしい写真なども、気持ちや家族の状況によって変わる可能性があります。
愛昇殿のエンディングノート「セルフポートフォリオ」では、気持ちの変化に応じて新しい冊子をお渡しすることも可能です。書くことに負担を感じず、「今の気持ち」をそのまま残せる。そんな使い方ができるノートです。
また、遺影に使う写真も定期的に見直しておくと安心です。若い頃の写真も素敵ですが、現在の自分に近い自然な表情の写真をあらかじめ準備しておくと、葬儀の際に家族が迷わずに済みます。愛昇殿では、毎年の見学会やイベントで遺影用の写真撮影サービスも実施しています。「最近の自分」を記録する機会として、ぜひご利用ください。
愛昇殿では、見学会などのイベントを随時開催しています。イベントでは、エンディングノートの書き方や内容に関するご相談にも対応しています。「何から書けばいいかわからない」という方も、まずは気軽に足を運んでみてください。あなたらしい旅支度を、一緒に始めてみましょう。